大暑末候 「夏の花」「夏の味わい」
木槿(むくげ)でございます。
「槿花一朝の栄」などと言われますように朝に咲いて夕方にはしぼんでいくはかない花ではございますが、一重の薄い花びらの木槿を入れて少々露でも打ちますと夏の床の間が涼しげに演出されてまいります。
夏の懐石は「浅漬」に八丁味噌などの赤い味噌汁が決め手ではございますが他の料理も口当たりの良いものを心がけます。
ただただ冷たい料理にて暑さをしのんでいただくのではなく、熱々の料理を口当たりよく召し上がっていただくのが夏の最上のおもてなしにて、煮物椀に於いても寒い時の「真薯」に対し夏は「あんぺい」「魚そうめん」「葛打ち」などと暑い時候に召し上がりやすい工夫をいたします。
季節により素材の旬は入れ替わりますが料理方自体にも季節の手法があるのを感じて頂ければ懐石料理の素晴らしさをさらに楽しんでいただける事と思います。
・・・「槿花一朝の栄」・・・出典は白居易の放言詩 「松樹千年終是朽 槿花一日自為栄」(松樹千年終に是れ朽ち、槿花一日自ずから栄を為す)から抜粋された言葉のようです・・・