三月のおもてなし

三月は上巳の節句でございます
この月ならではのお料理、室礼など
お楽しみいただければ幸いでございます

五節供の二番目「上巳」
古くは三月上旬の「巳の日」に行われていたのが
陽数にあたる三を重ねる日に移ったそうでございます
「桃の節句」とも呼ばれますが
旧暦では桃の花が咲く頃に祝っていた名残の呼称のようです
中国の桃源郷では3千年に一度だけ
桃の花が咲きその実を食べると不老不死
永遠の命を授かると伝えられたように
桃はたいへんおめでたい木で
子だくさんの象徴とされたようでございます

宮中では桃の節句に御所人形でひいな遊び
お餅を指でちぎりあんこをのせて
「ひっちぎり」と称して食べたようで
そこから転じて「ひちぎり」
というお菓子がうまれました
その形を模倣した器や
菱の実を食べて千年も生きたという仙人の話より
菱の実の形を模した菱餅
それにちなみ菱形の器など使い料理を盛り込みます

日本全国どこでも祝う女の子のお祭り
雛人形を飾り、蛤の吸い物、ちらし寿司
貝の鉄砲和え(ぬた)など
上巳の節供の古くから伝わる味わいに
工夫を加えて「上巳」の料理をいたします

流し雛
桟俵(さんだわら)を船に見立て
夫婦雛をのせ川や海に流し
無病息災を祈ります
雛人形の起源とされ
源氏物語にも登場します

長い冬が終わり、春を迎える時期
まさに「一陽来復」の意味にて
初春に飾った結び柳の目立ちを
上巳の節句まで飾ります

季節の料理とともに
日本の歳時
月々の趣向など
お楽しみいただくのも
また御一興かと室礼を調度いたします